セキュリティテストとは、システムやアプリケーションのセキュリティ対策が適切に機能しているかを検証し、脆弱性や設定不備を特定するプロセスです。目的は、攻撃を受ける前に弱点を見つけ、対策を講じることです。
■ 脆弱性診断(Vulnerability Assessment)
既知の脆弱性データベース(CVEなど)と照合し、システムの弱点を自動または半自動で検出します。スキャンツールを利用し、脅威レベル別に分類(Critical / High / Medium / Low)します。
代表的なツールには以下があります。
・Nessus、OpenVAS(ネットワーク診断)
・OWASP ZAP, Burp Suite(Web診断)
■ ペネトレーションテスト(Penetration Testing)
実際の攻撃者になりきって侵入可能性を検証します。ツールと手動を併用し、シナリオベース(例:SQLインジェクション、権限昇格)で実施します。
テストの手法としては、ブラックボックス(事前情報なし)、ホワイトボックス(設計・ソース情報あり)、グレーボックス(限定情報あり)があります。
ペネトレーションテストで利用される主な環境やツールには、以下があります。
これらを組み合わせて、疑似的に攻撃を仕掛け、脆弱性を発見します。
・総合ペネトレーションテスト環境
Kali Linux:ペネトレーションテスト用ディストリビューション。Nmap, Metasploit, Burp Suite など多数のツールを標準搭載。
Parrot Security OS:Kali同様のペンテスト向けLinux。軽量で匿名化機能も強化。
・ネットワークスキャン・脆弱性探索
Nmap:ポートスキャン、サービス検出、OS識別。スクリプト(NSE)で拡張可能。
Masscan:超高速ポートスキャン。大規模ネットワークの調査向け。
OpenVAS:ネットワーク脆弱性診断。詳細なレポート出力が可能。
・攻撃フレームワーク
Metasploit Framework:既知の脆弱性を利用した攻撃を自動化。エクスプロイト作成やカスタマイズも可能。
Exploit-DB:公開済みエクスプロイトのデータベース(Metasploitと併用されることが多い)。
・Webアプリケーション診断
Burp Suite:Webアプリの脆弱性診断(SQLi, XSSなど)。手動テストと自動スキャンを併用可能。
OWASP ZAP:無料で利用可能なWebアプリ診断ツール。プロキシ機能でトラフィック解析。
Nikto:Webサーバの設定ミスや既知の脆弱性をチェック。
・パスワード解析
Hydra:ネットワークサービスのブルートフォース攻撃。
John the Ripper:ハッシュ化されたパスワードの解析。
Hashcat:GPUを使った高速パスワードクラック。
・無線LAN・IoT機器
Aircrack-ng:Wi-FiのWEP/WPAキー解析。
Kismet:無線LANネットワークの検出と監視。
Bettercap:IoT機器やBLE(Bluetooth Low Energy)への侵入試験。
・ソーシャルエンジニアリング
SET (Social-Engineer Toolkit):フィッシングや悪意あるドキュメント生成など、人を騙す攻撃のシミュレーション。
■ まとめ
セキュリティテストは、システムやアプリケーションの弱点を事前に発見し、攻撃を受ける前に対策を講じるための重要な工程です。
脆弱性診断では、CVEなどの既知情報を活用し、ツールによる自動・半自動検出で迅速に弱点を洗い出します。一方、ペネトレーションテストでは、実際の攻撃を模したシナリオベースの検証を行い、潜在的な侵入経路や影響範囲を把握します。
活用できるツールは多岐にわたり、ネットワーク診断(Nmap, OpenVAS)、Webアプリ診断(Burp Suite, OWASP ZAP)、パスワード解析(John the Ripper, Hashcat)、無線LAN・IoT試験(Aircrack-ng, Bettercap)、さらにはソーシャルエンジニアリング(SET)まで網羅されます。
脆弱性は日々新たに発見されるため、単発で終わらせず、改善と再テストを継続することが不可欠です。継続的な診断サイクルが、堅牢で信頼性の高いシステム運用の基盤となります。