本番環境への移行前には、単にコードをデプロイするだけでなく、リスクを最小化しつつ安定稼働を確保するための準備が必要です。
■ 最終テスト
システムテストが完了した後、ユーザによる受け入れテスト(UAT)を実施します。
問題なければ、リリース判定会議を開き、開発、QA、運用、セキュリティ部門が合議してリリース可否を決定します。
■ 本番移行
データベース、構成ファイル、重要設定をバックアップ後、CI/CDパイプライン利用(Jenkins, GitLab CI, GitHub Actionsなど)し、本番環境へのデプロイを自動化します。移行後、スモークテスト(主要機能の簡易動作確認)を実施します。
また、切り戻し計画(Rollback Plan)を立案し、不具合発生時に迅速に旧バージョンへ戻せる手順を用意します。
■ 業界ごとの外部認証
製品やサービスを市場に提供するためには、法令・規制・業界標準に基づく外部認証が必要になる場合があります。以下は代表的な例です。
規格・認証 | 概要 | 業界 |
PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard) | クレジットカード情報を取り扱う事業者に必須の国際基準 | 金融・クレジット業界 |
SOC 2 | セキュリティ・可用性・機密保持の監査報告書 | 金融・クレジット業界 |
ISO 13485 | 医療機器品質マネジメントシステム | 医療業界 |
HIPAA(米国) | 医療情報保護法(電子カルテ等) | 医療業界 |
ISO/SAE 21434 | 自動車サイバーセキュリティ管理 | 自動車業界 |
UNECE WP.29 | 自動車の型式認証規制(サイバーセキュリティ含む) | 自動車業界 |
IEC 62443 | 産業オートメーション・制御システムのセキュリティ規格 | IoT・工場制御系 |
CEマーク(EU) | 欧州での安全基準適合表示 | IoT・工場制御系 |
ISO/IEC 27017 | 欧州での安全基準適合表示 | クラウドサービス |
ISO/IEC 27018 | クラウド個人情報保護のためのガイドライン | クラウドサービス |
ISO/IEC 27001 | 情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS) | 共通(全業界適用可) |
■ まとめ
本番リリースは単なるコードデプロイではなく、安定稼働とリスク最小化のための計画的なプロセスが不可欠です。
最終的なリリース可否は、UATの合格と部門横断的な合議で判断され、CI/CDパイプラインによる自動化や切り戻し計画の準備が信頼性を高めます。
また、業界や地域によっては、PCI DSS、ISO 13485、ISO/SAE 21434、IEC 62443、ISO/IEC 27001などの外部認証が求められます。これらは市場参入の条件であると同時に、顧客信頼の証ともなります。
したがって、技術的準備と法的・規制面の要件を両立させることが、安心してサービスを提供するための鍵となります。