プロジェクトマネジメントについて、最新の体系を学ぶために、PMP(Project Management Professional)を取得しました。取得の動機は、これまで、主にQ(品質)・C(コスト)・D(納期)の達成を目標としたプロジェクトマネジメントを現場で実施してきましたが、行き当たりばったりで対処してきたことが、果たして正解なのかを知りたいと思ったことです。
私自身、外国の資格を取得するのは始めてで、試験内容も含め、国内の資格とは大きく異なる部分もありました。あくまで、試験でしかないので、実務としての答え合わせはできないですが、ギャップを把握することはできました。受験までのリアルな作業を含め、まとめてみます。
■ PMP試験とは何か
米国のPMI(Project Management Institute.)という私的な資格認定団体が実施している認定試験の一つであり、プロジェクトマネジメントの知識を問うものです。
試験のシバラスといえるものが、PMIで作成されたPMBOKガイド(2023年11月時点では第7版)です。
これは、英語版ですが、PMI会員となると無料でダウンロードできます。
実際に試験で問われるものは、ウォータフォールである予測型のプロジェクトと、アジャイルである適合型のプロジェクトである2つのマネジメントに関連する内容です。ただし、アジャイルに関連する出題が半数以上を占めます。
また、ITプロジェクトに特化しているわけではなく、さまざまな業種・業態のプロジェクトのマネジメントを対象とします。
■ PMP試験の受験詳細
1.受験にかかる費用(2023年11月時点)
以下を合計すると、81,600円です。高額です。
①PMI会員になるための年会費
PMI® Membership $139.00(150円/ドルで計算:20,850円)
②PMP受験費用
Project Management Professional (PMP)® Exam $405.00(150円/ドルで計算:60,750円)
※PMI会員になった方が、PMP受験費用が割引になるため、年会費を含めても安く済みます。
また、仮に再受験が必要な場合でも安く済みます。
2.PMP試験の受験までの道のり
【ステップ1】
まず、PMP研修(35時間)を受講します。これにもお金がかかります。
Udemyの以下の研修を受講しました。
PMP Certification Exam Prep Course 35 PDU Contact Hours/PDU
TIA Education, Andrew Ramdayal
¥12,800
とりあえず、内容の理解はさて置き、流し聞きするため、すべての動画2倍速で再生させます。
それでも1週間ほどかかりました。すべての再生が終了すると修了証明書が発行されます。
最低限、聞いておくべき動画は、「セクション14:PMP Application」(経歴書の書き方)です。
経歴書のサンプル、そして、経歴書の監査対象に選定された場合の対応などを解説してくれます。
【ステップ2】
PMIのアカウントを作成します。以下の「Register」ボタンから作成します。
すべて英語で入力します。
以下の項目を記載します。
【ステップ3】
上記に述べたように、経済的合理性のための申し込み前にPMI入会します。
ログイン後、入会金を$139.00(150円/ドルで計算:20,850円)支払って、会員となります。
もう、これでPMP試験を受けざる負えないという感情が、わいてきます。
【ステップ4】
やっと、PMP試験の申し込みができますが、これが大変です。
すべて、英語で入力します。
ログイン後、Certification → PMP→「APPLY NOW FOR YOUR PMP」と選択し、以下の項目を入力します。
・Education
●Academic Education ※学歴
①Highest Level of Education:
Bachelor Degree(学士)/Master Degree(修士)/Doctor Degree(博士)
②Years Attended: 在席 年( 西暦)
③Country of Institution: 教育 機関 が ある 国
④Name of Institution: 教育 機関 名
⑤Field of Study: 学部・分野
●Professional Education ※PMP研修(35時間)
①Course Title: 研修 名( PMI Authorized PMP Exam Prep( Japanese))
②Provider Name: 研修 提供 者(社) 名
③Course Dates: 研修 実施 年月
④Hours: 受講 時間( 35)
・Experience ※経歴
経歴に必要な月数は、学士以上であれば、合計で36カ月以上が必要となります。
また、カウントできる経歴は8年前までしかさかのぼれません。
経歴は、次の項目で構成されます。
合計の期間が、36カ月以上となるまで複数の経歴を追加します。
①Project Title
プロジェクト名
②Organization
会社・組織
③Job Title
立場
④Functional Reporting Area
会社・組織のカテゴリ
⑤Organization Primary Focus
業種
⑥Approach/Methodology
プロジェクトマネジメント手法
⑦Project Team Sizes
プロジェクトの人数
⑧Project Budget
プロジェクトの予算
⑨Time Spent on Project to Date
期間
➉Project Description
プロジェクトの概要を200~500ワードの間で記載する。
機能的、技術的な観点よりも、品質、納期、コスト、チームなど、
マネジメントに関連する観点で記載する。
以下の例で、約200ワードほど。
・個人情報
①Home Address/ Work Address: 住所が自宅か、会社かの選択
②Country: 国( Japan)
③Address: 住所 番地
④Address( optional): ビル 名 や 階数 等
⑤City/ District: 区 市町村
⑥State/ Province: 都道府県
⑦Zip/ Postal Code: 郵便番号
⑧email:メールアドレス
申し込み後、PMIによる審査があって、パスすれば、5日ぐらいで以下のようなメールが送られてきます。この後、受験費用の支払いとCBT試験センターを予約が可能となります。
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Congratulations! Your PMP Application has been Accepted.
Pay for Your Exam
Dear Shinichi,
Congratulations! Your Project Management Professional (PMP)® application has been accepted.
Now that your application is complete, you’re well on your way to advancing your career. It’s time to pay for your exam.
If you have already paid for your PMP® exam, thank you. No further action is required.
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経歴の記載は、ランダムヒットした人だけに監査が行われるようです。
監査は、卒業証明書の提出、経歴への上司のサインなどによって行われるようです。
上司に英語の履歴を説明するなんてぞっとしますし、合格後でもないのに受験を話したくないというお思いもあって、マネジメントの観点で必要事項をわかるように記載しました。
【ステップ5】
私は、受験費用の支払いとCBT試験センターを予約する前に、先にPMPの勉強を始めました。
勉強方法は、PMIのPMBOKガイド(第7版)テキストは全く読まず、テストファーストで練習問題のコンテンツを探しました。以下のコンテンツを使いました。
①Udemyの試験問題(日本語)
「PMP®認定試験」で一発合格を目指す! 効率的な試験対策のための戦略コース (2021) アジャイル対応
CLUTCH Management
¥6,200
②書籍(日本語)
PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応 改訂版
鈴木 安而 (著), PMアソシエイツ株式会社 (著), 株式会社NTTデータユニバーシティ (監修)
¥4,378
③書籍(英語)
PMP Mock Practice Tests: PMP certification exam preparation based on the latest updates – 380 questions including Agile
Yassine Tounsi (著)
¥3,367
上記の3つを3回繰り返しました。一番内容がよかったのは英語ですが③の書籍でした。
勉強期間は11/3~11/17までで、勉強時間は4時間×15日=60時間ほどで、受験しました。
【ステップ6】
受験費用の支払いとCBT試験センターを予約は、勉強を開始してから1週間後に実施しました。
CBT試験センターは、千葉駅の試験センターを、2週間後の土曜日12:30開始で予約しました。
新宿の試験センターが一番近かったのですが、直近の土日があいてないのと、朝8:30開始でしたのでやめました。
その後、試験日の2・3日前に、PMIから受験票がメールで送られてきました。
【ステップ7】
PMP試験当日は、以下を持参して、千葉駅の試験センターまで向かいました。
①身分証明証(運転免許証)
②受験票(プリントして持参)
試験開始は12:30でしたが、12:10に入館しました。
その後、受付を済ませ、荷物をロッカーに入れます。
そして、12:30まで待つことなく、すぐに開始となりました。
その際、メモ用の2枚の下敷き状のシートと水性ペンをもらって、PCの前に座りました。
そのほかの持ち込みは、一切できません。
問題数は、180問、制限時間は、230分です。
1~60問まで解答すると、休憩が10分に入ることができます。
休憩に入る前に、1~60問までの見直しをすることができます。
休憩の10分は、部屋の外に出てトイレに行くことができます。
10分は自己管理で早めに戻って再開しました。
61~120問まで解答すると、休憩が10分入ります。
休憩に入る前に、61~120問までの見直しをすることができます。
休憩の10分は、部屋の外に出てトイレに行き、また早めに戻って再開しました。
121~180問まで解答し、10分前に完了しました。見直しをし、1分前に試験を終了させました。終了時に「結果は、PMIで審査後、あとでにメールする」と表示されました。
PMP研修(35時間)では、3時間ぐらいで大体の人は解答を完了できると聞いていたのですが、
結局、4時間弱、めいっぱいかかって、試験を完了させました。
その後、受付で、一枚の紙をもらって、「congraturation」(合格)との記載を確認しました。
ただし、最終結果は48時間以内にメールで通知と記載されていました。
※PMP試験アプリの機能Tips
・設問の画面には、マーキングボタン、見直しボタン、英語表示ボタン、電卓ボタンがある
・マーキングボタンで指定した箇所を色づけ(黄色、ピンクなど)できる
・見直しボタンで、後で見直す設問にチェックマークをつけれる
・英語表示ボタンで、設問を英語で表示できる(日本語が直訳で時々誤記もあるためかも)
・電卓ボタンで計算できる
・1~60問、61~120問、121~180問ごとに一覧が表示され、見直しの設問、「不明」と記載されたチェック漏れの設問がわかる
【ステップ8】
後ほど、受け取った審査結果のメールは、以下の通り合格でした。
PMIにログインすると、試験結果の詳細をみることができます。
私の成績は、全体としては、ドメインと呼ばれるピープル、プロセス、ビジネス環境のうち、プロセスが悪いという結果です。さらに、ドメインのタスク毎にLow、Middle、Highの3つのレベルで成績を確認できます。(なんか、性格診断の結果のようですね)
※ドメインのタスクの意味は次の文書に記載されています
Project Management Professional (PMP)
Examination Content Outline – January 2021
■ まとめ
PMP試験の内容は、あいまいな記載の問いしかない、直接的に知識を問う問題はないという印象です。はっきりしない設問は、よく法律関連など文系の試験にある内容です。理系というより文系の要素が強い試験です。そのため、試験テクニックとして「消去法」が使われます。
PMPの精神として「プロアクティブ」(先取りする)という言葉が中心にあり、前向き、積極的、先見的な行動をとることが良しとされます。
社交的、話がうまい・・・技術者とは逆の人の素質なんですが、このような営業的な資質がないとプロジェクトはできない、そして、金儲けはできないということなのかと思ってしまいました。
しかし、いきなり、こんな人にはなれないですね・・・正直言いますと・・・
PMPの内容は、あまりにも正論過ぎて、ついていけない部分や理解に苦しむ箇所も正直多々あります。
特に、日本のIT業界は特殊で、現実とのギャップがかなり大きいと感じました。
さて、PMPを取得すべきかどうかの結論ですが、高額すぎる割りに実務的なメリットが見えない試験であるため、私個人としては「不要」だったと思っています。
今後の資格更新のための費用と時間を考えると、なかなか維持しにくいのも、どうかなと思うところです。したがって、無理にとる必要もないかと思います。PMPを取ったから、急にアジャイル・プロジェクトが実行できるようになるわけでもありませんので。また、無駄な紙切れ以下の資格を取ってしまったことを反省したりしています。
ただ、実際にプロジェクトマネジメント力に長けた人であれば、国際的な認知度からいうと、活躍の場が広がり、説得力のある証となり得るのではないでしょうか。
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