ブロックチェーン

決済とブロックチェーンの関係

投稿日:2021年6月3日 更新日:

モノを買う時、お金を支払う行為を「決済する」と言います。決済とは、お互いに合意して決めた量の自分のお金を他人に引き渡すことです。意思決定と口座から口座へ資金を移動する業務が合体した言葉です。決済者とは、口座移動を許可する人とあり、モノを買う人が、それに当たります。

現金とは、貨幣と紙幣のことであり、お金を可視化した媒体のことです。口座から引き出したお金を一時的に保存し、持ち運ぶための道具です。その現金は、モノを買うことにより、相手に引き渡されて、口座に入金されます。したがって、モノを買うという業務は、口座から口座への「送金」と言い換えられます。


■ 決済は面倒なもの

決済である「送金」を手間をかかるものにしているものは、以下の2つです。

・決済者の許可

決済者の許可とは、決済者の引き出し口座と、いま決済しようとしている決済者を紐づけることです。これを「本人認証」といいます。決済者の引き出し口座は、口座番号あるいはクレジットカード番号(PAN)によって特定されます。これと決済者本人をリアルタイムにむすびつける方法は、多要素認証が使われます。
保持情報として、キャッシュカード、クレジットカードの提示やワンタイムパスワードの提示、知識情報としてパスワードやPINの入力、生体情報として指紋認証などを組み合わせて使われます。

・決済システムの許可

口座は、銀行にあるコンピュータのデータベースで管理されているデータでしかありません。各銀行のシステムを連結したネットワークが「決済システム」と呼ばれます。
口座を使うには、銀行の許可が必要となります。「決済システム」を使って、この許可を得ること「オーソリ」と言います。

「オーソリ」には、商品の値段などの取引金額が設定され、「決済システム」にて口座の残高、クレジットカードの与信枠が確認後、取引可能かを判定します。

■ 「決済システム」は信用できるのか?

「決済システム」は、金融庁の監査によって厳しいチェックや監視を受けます。そいう意味では、国によって信頼性が担保されていると言えます。

しかし、最終的には、銀行口座の操作など、銀行の行員であれば簡単にできてしまいます。実際、不正送金や横領などは、何の権限もない一般の社員によっても引き起こされています。このように、技術的にも運用面でも完璧な対策を実施しているはずのシステムでも、やろうとすればあっけないほど簡単に、不正を働くことができてしまいます。

■ ブロックチェーンの特徴

ブロックチェーンの最も大きな特徴は、「決済システム」がないことです。つまり、金融庁や銀行のような常に監視する特定の誰かがいません。

その理由は、口座から不正に引き出しするような取引の改ざんを理論的に防止しているからです。

1)取引(トランザクション)

引き出し元の口座(インプット)から送金先の口座(アウトプット)へ送金することをいいます。引き出す金額、振り込む金額、手数料が記録されたデータです。

トランザクションは、公開鍵暗号化方式による暗号化・復号化が行われます。送信先の口座の公開鍵によって暗号化され、送信先の口座が持つ秘密鍵でしか復号化できません。

2)ブロックとブロックチェーン

トランザクションは、ヘッダをつけてブロック化されます。複数のトランザクションを一つのブロックとすることも可能です。
ブロックチェーンとは、このブロックをリンク形式でつなげたものです。新しいブロックを作成して、ブロックチェーンにつなげることをマイニングと呼びます。

ヘッダには、ブロックチェーンの特徴である次の2つの値が設定されます。

・直前ブロックのハッシュ値

現ブロックを生成するためには、ブロックチェーンにすでにある最終ブロックのハッシュ値を計算して使用します。

・ナンス値

使い捨ての数字という意味ですが、この値を決めるには、以下のルールがあります。

「生成する現ブロックのハッシュ値の最初に一定以上のゼロが続くこと」

生成する現ブロックをブロックチェーンにつなげるには、このルールを満たすまで、ナンス値を適当に変えながらハッシュ値を計算する必要があります。この作業がマイニングと呼ばれるものです。マイニングには、時間がかかります。
そして、もっとも早く上記の条件に合ったナンス値を見つけた人がトランザクションの手数料を受け取ることができます。さらに、手数料と合わせて、ブロックチェーンからのマイニング報酬が加算されます。

すでにブロックチェーンに存在する取引を改ざんする場合もマイニングと同じ作業を繰り返す必要があります。改ざんした取引が含まれるブロックのナンス値を再度計算する必要があるだけでなく、その後に続くブロックのハッシュ値とナンス値を延々と再計算しなければなりません。さらに、その作業をやっている間に、マイニングによって新しいブロックがチェーンにつながれていきます。その結果、計算する時間的に改ざんが不可能となります。

したがって、ブロックチェーンにおける送金には決済システムの許可はありません。その理由は、誰も監視していなくても、完璧に改ざんをすることは実質できないからです。

■ まとめ

中央集権の象徴である決済は、「オーソリ」と呼ばれる厳格な承認メカニズムによって支えられています。
ブロックチェーンを使った承認メカニズムは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれ、マイニングを行う複数のマイナーによって行われます。この行為は、単なる決まった計算によって検証をするもので、「承認」という主観的な人間臭い行為とは真逆の客観的で公平なものです。

決済を一部の狭く閉じた世界から解放し、地位や権限とは無関係な人たちに委ねるブロックチェーンの仕組みは、画期的であり、現状の金融の仕組みを破壊する可能性を秘めています。


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