冒頭から結論を言えば、 IT エンジニアが持つIT資格の価値はゼロです。
ソフトウェア開発は、実力の世界です。現場では、スキルや知識のない人は、手も足もでません。
現実の世界では、資格など、まったく意味がないと断言できます。
■ IT資格の種類
IT資格には、下記のように国家資格とベンダー資格の2種類があります。国家資格と言うと、権威があるように聞こえますが、中身はそうではありません。その実体は、特定の汎用的なテーマに関する知識を体系的に習得するためにあります。一方、ベンダー資格は、製品に特化した操作手順とそれに付随する知識だけを習得するためにあります。
実際に、現場で製品に触れることになるので、ベンダー資格を取得するほうが即効性があります。ただし、製品やプログラミング言語に特化しているため、違う製品やプログラミング言語を扱う場合、その製品やプログラミング言語のベンダー資格を取得するなりして、習得する必要があります。
・国家資格
IPA(情報処理推進機構)が運営管理する資格。現状、以下の合計13種の資格がある。
・ベンダー資格
各種製品を開発・販売するベンダーなどが運営管理する資格。その数は、製品が出る度に、増え続けている。
以下に主なベンダー資格を示す。
JDLA Deep Learning for GENERAL(G検定) JDLA Deep Learning for ENGINEER(E検定) | ・一般社団法人 日本ディープラーニング協会が認定するAI資格 ・ディープラーニングに関する知識を活用する人材(ジェネラリスト)とディープラーニングを実装する人材(エンジニア)に向けた資格を認定 ・現時点では、唯一のAI資格 |
LinuC(Linux技術者認定資格 リナック) | ・特定非営利活動法人エルピーアイジャパンが認定するLinux技術者資格 |
LPIC | ・米国非営利団体のLinux Professional Institute Inc.が認定するLinuxなどオープンソースを利用する技術者の認定資格 |
オラクル認定MySQL認定資格 | ・米国のOracle Corporationが認定するMySQLに関するに技術者資格 |
オラクル認定Java資格 | ・米国のOracle Corporationが認定するJavaに関するに技術者資格 |
オラクルマスター | ・米国のOracle Corporationが認定する自社製品Oracleに関するに技術者資格 |
CompTIA | ・カナダのCompTIA (the Computing Technology Industry Association)が認定するIT技術者資格 |
ウェブ解析士 | ・一般社団法人ウェブ解析士協会が認定するWeb解析技術者資格 |
CISA /CISM/CGEIT/CRISC | ・米国のISACAが認定するIT技術者資格 ・監査、セキュリティなどマネジメント関連の知識と経験を認定 |
CCNA/CCNP | ・米国のシスコ社が認定する自社製品のネットワーク技術者資格 |
認定ホワイトハッカー(CEH) | ・米国のEC-Councilが認定するホワイトハッカー資格 |
AWS認定資格 | ・米国のAmazon社が認定するAWS技術者資格 |
GCP認定資格 | ・米国のGoogle社が認定するGoogle Cloud技術者資格 |
CISSP | ・国際的な非営利会員団体(ISC)²が認定するセキュリティ技術者資格 |
■ IT資格の意義
IT資格は、取得できたからといって、より高度な思考できるようになるということではありません。 IT 資格は、頭をよくするための道具ではないのです。
したがって、研究者の目指す「博士」のような「箔をつける」という意義もありませんし、弁護士や公認会計士などの業務資格とは違って、取得したからと言ってすぐに仕事ができるようになるわけではありません。
IT資格 の意義は、単に、体系立てられた知識を効率的に手に入れるための手段でしかありません。IT資格を活用するポイントは、2つです。
一つ目は、新しい知識をインプットするための手段として活用します。ITの仕事は、情報を扱うことがメインですので、事前に体系的な知識があれば、それを基本として応用することができます。現場で、初めて新しい技術に対峙するのと、事前に知識が頭の中にあるのでは、精神的に雲泥の差があります。
二つ目は、現場で経験した多様な知見を整理するためのアウトプットの手段としての活用です。プロジェクトが終わった時、 その経験を体系化した知識として自分の中に蓄積していくためにIT資格を利用します。
したがって、 IT資格は、キャリアアンカーとして知識と経験をストックするために使うものです。
IT資格は、経歴書を彩るためのものであり、転職エージェントにアピールするためにあると言っていいでしょう。
■ わかっていても、 IT エンジニアが資格を取る理由
IT エンジニアが資格に抱く妄想とは、資格を取れば、同僚や上司より優位に立てるという思い込みです。しかし、資格=実力ではありません。そんな妄想は、目の前のタスクに触れたとたん、木っ端みじんに吹き飛びます。
知識を現場で使うためには「応用力」がいります。ただ知っているだけではダメで、それを現実に合わせて、どのような使い方があるのかを提示できるようになることが必要です。
しかし、頭ではそうとは知っていても、 IT エンジニアが資格に固執する以下の理由あります。
1)自信がない
何か拠り所になるものがないと IT エンジニアは、自信を維持することができません。開発を実施している最中であれば、優れた行動と結果を周りに見せつけることで自信とすることができます。
しかし、開発が完了してしまうと、次第に不安に包まれていきます。資格に頼ることで、この感情を抑止しようと考えます。
2)選択枝がない
ITエンジニアにとって、エンジニアとして結果が見える自己啓発は、資格しかありません。研究者であれば、修士や博士などの学位があり、経営者であれば、MBAや起業などがあります。しかし、 IT エンジニアにとって日常のタスクを離れると、自己啓発の対象が資格以外ありません。
3)中毒性がある
一つIT資格を取ると、まるでパズルのピースを埋めるように「次、次・・・」とハマる人も少なくありません。 IT 資格体系が少しだけ上の資格が設定されていて、継続的に達成感を味わえるため、中毒性があります。
■ IT資格 の価値が下がっている理由
IT資格で問われる知識は汎用的である故、コモディティ化するペースが速いです。そうなると、インターネットから取得できる情報との差がなくなります。その結果、インターネット未満のIT資格 が増え、陳腐化していきます。
資格は、単に特定の分野を手早く、広く浅く知るための手段ですが、年単位で試験日程が決まっており、短時間で取得できるわけではありません。そういう意味では、IT資格 を知識を得るだけと考えるとまったく効率的とは言えません。
ITの知識は、いちいち暗記して試験まで待たなくとも、インターネットに書いてあるものを理解できさえすれば、事足りることがほとんどです。
■ それでもIT資格がほしい人へ
IT資格 は、無駄に難しいものもあります。たとえば、以下のような論文を書かせるような試験がそれです。
・ITストラテジスト
・システムアーキテクト
・プロジェクトマネージャ
・ITサービスマネージャ
・システム監査技術者
・技術士(情報工学)
これらは、かなりの時間をかけ、論文を書く練習をしなければ、合格できません。しかし、その割には、現場で直接使える知識が得られるとは言い難いです。そもそも、 ITの業務に論文を書くような作業はありません。せいぜい、長文を書くのは顧客にバグを説明するための報告書ぐらいです。確かに、ものを書くことが苦痛にはならなくなりますが、所詮その程度です。
これらの資格は、よほどの暇人でもない限り、避けたほうがいいと思います。取得できたときの達成感と優越感はありますが、「だから何?」とシラけること請け合いです。もし、この手の難関資格が欲しいなら弁護士・弁理士・会計士などの業務資格を狙ったほうがいいです。
IT資格 は、 難しいから良いというわけではありません。
ITは、深く掘り下げて探求するものではなく、幅を広げていくものです。したがって、現時点で業界内で常識としてみなされる汎用的な知識が身に着くものだけを取得すればいいのです。
このような観点からIT資格の中で、取得するのに効率的で価値があると思われるものは、以下です。
・データベーススペシャリスト
・ネットワークスペシャリスト
・情報処理安全確保支援士
・応用情報処理技術者
・CISSP
・AWS認定資格
・GCP認定資格
■ まとめ「独学をする習慣さえあれば、もはやIT資格 は無用」
これまで、IT資格は、独学の習慣をつけるためにありました。 その証拠に、ITベンダーでは、いまでも、社員の教育訓練の代わりにIT資格 取得を奨励し、幾ばくかの金銭的インセンティブを与えています。しかし、もはや「資格」という額縁に入った知識は、無用の長物です。
それよりも、遊ぶようにITを学習し、手を動かし続けられるほうがずっと価値があります。
目標が欲しいなら、IT資格のようなインプットの量を目標にするのではなく、ブログなどのSNSで自分のスキルや知識を発信したり、自分でサービスを立ち上げてみたりなど、アウトプットすることを目標にしたほうが意味があります。こちらのほうが、結果が目に見えるだけでなく、ストックとすることができます。
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